皆様は本州最南端の串本・潮岬へ行かれたことはあるでしょうか? ここには知る人ぞ知る羊羹の名店「紅葉屋」さんがあります。
私がここを初めて訪れたのはもう数年前になりますが、「潮岬においしい羊羹屋さんがある」と人づてに聞いて、和菓子好きの私としてはたまらず車を走らせていったのです。
紅葉屋さんの手づくり羊羹
到着すると、そこはお店というより工場というより「邸宅」と言った方がふさわしいようなたたずまいのところでした。とまどいながら子どもと呼び鈴を押したところ、給食調理員さんのような完全装備(頭にはシャワーキャップのようなもの、ゴム手袋、全身を覆うエプロンに白い長靴)の「いかにも羊羹をつくっている最中です」という感じの男性があらわれ、「あのう、ここで羊羹を買えると聞いて来たんですが……」と口ごもる私に「奥へどうぞ」と案内してくれたのです。
「邸宅」のドアを押して中へ入ると、そこはリッチで上品で凝った内装の広い応接間といったたたずまいで、さらにとまどいの広がる私と子どもの前にあらわれたのはステキなマダムでした。
「ここはどこ? 私たちは何をしにここへ来たんだっけ?」と呆然としていると、マダムはまずお茶を淹れてくださり、「今、あちらで羊羹を切ってきますからお待ちくださいね」と言い残し、再び奥へと消えてゆきました。
居心地悪そうに座って熱いお茶を飲めないでいる子どもをなだめながら待つことしばし。色とりどりの羊羹が数種類、二切れずつ美しいお皿にのせられて運ばれてきました。まるでお客を(いえ、一応お客には違いないのですが)もてなすようなマダムの雰囲気に幻惑されながらも、子どもと私は出されたすべての羊羹をきれいにいただきました。
その種類はといいますと、普通の本練り羊羹のほかに塩羊羹、桜羊羹、抹茶羊羹、柚子羊羹、白いんげん豆の羊羹などで、炭入り羊羹に醤油入り羊羹など珍しいものもありました。今ではつくっていない種類もあるようですが、もしかしたら季節によっても変わるのかもしれません。
特徴は有名な小城羊羹のように表面がシャリシャリと糖化していることで、これは手づくりならではのことなんだそうです。でき上がってから一週間乾燥させて初めて、このシャリシャリ感が出るんだそうですよ。添加物も一切使っていないのに一週間放置ということは、温度管理などに秘密がなるのでしょうか? あの有名なモンドセレクションでも何回も受賞しているというだけあって、安物の羊羹なんかは比べ物にならないぐらいの上品なおいしさでした。
これはもうまとめ買いして帰るしかありません。手づくりだけあって賞味期限もそう長くはないし、お味から考えると決して高くはないのですが、「あればあるだけ食べてしまうな」と思って三本ほどに絞って買って帰りましたが、二、三日であっと言う間になくなってしまったので「やっぱりもっとたくさん買って帰ればよかった」と後悔したものです。が、今はインターネットでも買えるようになったのでありがたいことです。
紅葉屋の羊羹を買いに行くなら周辺観光も
潮岬というと大阪方面からでも遠く感じますが、高速道路もだんだん伸びていっている最中ですし、大島には映画で有名になったトルコとの友好のしるし「トルコ記念館」や「トルコ軍艦遭難慰霊碑」、ペリーの黒船来航よりももっと前に日本を訪れていたといわれる商船「レディー・ワシントン号」のことについて主に展示してある「日米修好記念館」など小さいながらも見どころもたくさんあります。明治三年にできた日本初の本格的な灯台も樫野崎という岬に建っていますし、近くの漁港では夏にはアワビ、冬には伊勢海老が安く食べられ、本当にいいところですよ。
こんなステキな串本の潮岬や大島にいらしたら、ぜひお土産には紅葉屋さんの羊羹をお試しになってみてくださいね。「名物にうまいものなし」とは昔からよくいわれることですが、ありきたりのお土産ではなく、受け取ってくれて食べた人に本当においしいと思ってもらえるようなお土産をお探しなら、この「紅葉屋の羊羹」は本当におすすめです。
最後になりましたが、実はこの羊羹のレシピは長い間、忘れ去られていて、その製造も途絶えていたそうなんですが、あるとき、今の社長さんが仏壇から先代のレシピを偶然見つけ、それを復活させて現在があるんだそうですよ。たしか私の聞いたお話では、社長さんは別のお仕事をされていたのだけれど何とかしてその先代のレシピを復活させたいと仕事を辞めてその復元に名年も取り組んだのだとか。
親子二代にわたる執念が実ったおかげで私たちが今、こんなにおいしい羊羹を食べられるのだと思うと不思議な気がしますし、感無量です。遭難したトルコの軍人さんたちを助けるために自分たちの乏しい食料も何もかもすべて差し出して献身的に怪我人の世話をしたという串本の人々の優しさがにじみ出ているような、そんな温かさを感じさせるこの羊羹、串本へいらしたらぜひ味わってみてくださいね。特に小城羊羹タイプの羊羹がお好きな方には自信を持っておすすめできます。全種類制覇したくなること間違いなしですよ。
本煉羊羹 竹皮包みの商品情報・賞味期限・製造者
商品名 | 本煉羊羹 竹皮包み |
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製造者・販売者 | 有限会社紅葉屋本舗 |
住所 | 和歌山県東牟婁郡串本町潮岬470番地 |
賞味期限 | 11日間※目安 |
購入場所 | 紅葉屋本舗 |
価格 | 1,296円※230g |